戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
第2回目の米朝首脳会談がハノイで始まった。今朝の新聞やテレビは関連ニュースで埋められている。そんな中で『毎日』の<国際>面は「ベトナムにも恩恵 米朝首脳会談」「対中警戒、米関係前進」との見出しで西脇真一ハノイ特派員の報告記事を載せている。ベトナムは単なる貸座敷ではないというわけだ。
西脇特派員のレポートは、ベトナムには対中警戒感が強く米国との信頼関係の構築が必要だという視点が強調されている。「対米関係構築を急ぐ背景には中国の存在がある」「中国をけん制するため、ベトナムにとって米国のプレゼンスが必要で、日本やオーストラリアなどとの関係も緊密化させている」。
米トランプ大統領は27日、金正恩氏との会談に先立ってグエン・フ―・チョン国家主席(ベトナム共産党書記長)と会った。その内容が28日付『赤旗』に紹介されている。チョン氏は米朝会談の開催地にベトナムを選んだことを歓迎し「自主独立の外交路線と相互尊重の原則に基づき、米国との関係強化を重視していると強調しました」。また枯葉剤除去など「戦争の負の遺産」の解決への協力を評価した。
トランプ大統領は「両国の包括的パートナーシップとインド太平洋地域でのベトナムの役割を重視していると表明」し、両首脳は「経済関係の互恵的な発展を共に支持しました」(『赤旗』)。また、ベトナムの航空会社がボーイング社から156億ドルで110機の航空機を購入する契約に立ち会った。
『毎日』記事に戻るが、ベトナムは以前から北朝鮮に「ドイモイ(刷新)をやらないか。やるなら経験を伝える」と誘っていたそうだ。ドイモイとは「計画経済」から「市場経済」へ転換するということ。この方針転換はアメリカにとっても利益をもたらした。ホーチミン市の都市開発や中部ベトナムのリゾート施設建設など、アメリカ資本の有力な投資先になった。確かに「経済関係の互恵的発展」ではある。
しかしそのような「国の発展」が国民の生活や福祉の向上に寄与しているのかどうか。例えば都市と農村の格差拡大、日本やEU諸国への労働者移住など、問題は蓄積しているのではないか。投資する側のアメリカ資本はその辺のところはお構いなしである。ベトナム首脳の今後の課題だろう。
アメリカと北朝鮮の急激な接近の裏に、「北朝鮮のベトナム化」というアメリカ資本の魂胆が隠されているようにも思うが、果たして邪推とばかり言い切れるだろうか。