戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

ノートルダム大聖堂の火災に思う 19/04/17

明日へのうたより転載

 「仏ノートルダム大聖堂火災」「パリ世界文化遺産」「消防士けが 改修中失火か」(16日付『毎日』夕刊)。高さ約90メートルの尖塔が焼け落ちる映像をテレビで見た。9.11米同時多発テロで崩壊するニューヨークの貿易センタービルを彷彿とさせる。同じようなショックを受けた。

 新聞報道によれば尖塔は木製だったんだな。大聖堂の屋根も焼け落ちたというからこちらも燃えやすい建材だったのかな。おれは1995年にパリに行った時、ノートルダム寺院を訪れ内部に入った。西のバラ窓と言われるばかでかいステンドグラスを写真に撮った。今回の火災では焼失を免れたらしい。

 出火原因はまだ不明で捜査中だというが、出火当時大聖堂は改修工事をしていた。写真で見ると大掛かりな足場が組まれている。この足場付近から火が付いた可能性が高い。足場は鉄パイプでできているのに何故火が出たのだろう。「出火時は閉館時間帯で観光客はおらず放火の形跡もなかったことから、何らかのトラブルにより出火したものとみられる」(『毎日』)。「何らかのトラブル」とは何なんだろう。

 米貿易センタービルは明らかにテロだったが、今回の火災はどうなんだろう。テロの可能性は本当にゼロなのか。確かに爆弾や火薬による爆発ではなかったようだが、あんなに急激に火の手が広がったのは何故なのか。一気に尖塔や大聖堂の屋根が焼け落ちている。どうも腑に落ちない。

 フランスは現在政情不安だと言える。昨年秋からの「黄色いベスト」運動は一向に収まらず、マクロン政権への批判が国民の間で強まっている。現に数年前から街中でテロが発生、人命が奪われている。そういったフランスの現状と今回の火災はまったく無関係と言い切れるのだろうか。

 マクロン大統領もトゥスクEU大統領も大聖堂の再建に全力を尽くすといち早く表明。日本政府の菅官房長官も「仏政府から何らかの支援要請がある場合には、日本政府として積極的に協力したい」と述べた。もちろん再建・復旧は大切だがこれだけの大火災なのだ、その原因を突き止めることも必要なのではないか。まだ燃えている最中に「放火ではない」と仏メディアが報じたというが先走ってはいないか。

 「再建へパリは屈しない」(17日付『毎日』)。フランス国民は何に屈しないのか、それが問われているように思える。