戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

高齢独居社会と労働組合の役割 19/04/23

明日へのうたより転載

 「2040年 独居世帯3割超す」「高齢・未婚加速 全都道府県で」(20日付『毎日』1面)「病不安手元に携帯/『大人食堂』に憩い」「高齢者独居加速」「東京、未婚者が一極集中」(同2面)。うちの倅も49歳独身、足立区千住で独居暮らしだから他人事ではない。

 セルフネグレクト(自己放任)という言葉が4月21日発信『東洋経済オンライン』に出ている。「突然の解雇や不安定雇用などによる失職、あるいは職場などにおける人間関係のトラブル、肉親の死別、病気や借金、またはそれに伴う離婚などによて、社会から落ちこぼれてしまう人たち」のことだという。

 『東洋経済』記事はさらに「特殊清掃」略して〝特掃〟という仕事の紹介もしている。「遺体の発見が遅れたせいで腐敗が進んでダメージを受けた部屋や、殺人事件や死亡事故、あるいは自殺などが発生した凄惨な現場の原状回復を手がける業務全般のことをいう。そして、この特殊清掃のほとんどを占めるのが孤独死だ」。ということはうちの倅も立派な孤独死候補というわけだ。ますます他人事ではなくなった。

 人が人とともに生活する社会単位は大きく分けて職場、地域、家族の三つあると思う。セルフネグレクトとはその三つとも断ち切られてしまうことだ。三つのうち一つでも繋がっていれば何とかなるケースも多いのではないか。うちの倅の例で言えば、職場、地域はどうだかわからないが、今のところ家族だけは間違いなく繋がっている。それも確実なのは親が生きている間だけとは思うがね。

 日本の社会、江戸時代や戦前戦中はいざ知らず、ついこの前までは職場の繋がりがあってセルフネグレクトを予防していたように思う。そのシステムの中心に労働組合があった。団結、統一、討論、議論、協議、仲間、付き合い、歌声、職場ニュース、集会、デモ、ストなど。繋がりのコンテンツがあった。

 例えば歌を歌うにも昔はスクラムを組んで合唱したが今はカラオケだ。仕事は共同作業がなくなって一人ひとり切り離される。隣のデスクの同僚ともメールで話す。集会やデモの動員もない。いわんやストライキなんか見たことも聞いたこともない。組合主催のサークル交流もないので異性と交際するチャンスもなく年取ってしまう。ネットの危険なサイトに引っかかる。賃金が安く結婚できない。

 「高齢独居加速」社会からの脱却は労働組合の再生・復活以外にないのではないか。
』)。フランス国民は何に屈しないのか、それが問われているように思える。