戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)三宅洋平と安倍夫人の高江行きに思う 16/10/03

明日へのうた]より転載

  三宅洋平という1978年生まれのロックミュージシャンがいる。今年7月の参院選で東京選挙区から立候補して25万7000票を取り供託金没収ラインをクリアした。彼の街頭での選挙演説が話題になり、おれもユーチューブで視聴した。反原発や環境問題を中心テーマに歯切れのいい話しっぷりに引き込まれた。おれが愛読している牧太郎さんのブログでも絶賛し、投票を呼びかけていた。

 その三宅洋平が安倍首相夫人の昭恵さんと8月6日、警察機動隊の国家暴力で問題になっている沖縄・高江に行った。8月30日付の『週刊SPA!』では4ページにわたって2人の対談が掲載された。反権力の騎手と見られていた三宅が何故首相夫人と接近したのか。その辺の事情が9月30日付の『週刊金曜日』で本人の口から語られている。「ゆきゆきて、進軍」などの映画をつくった原一男監督との対談だ。

 タイトルは「原一男の根掘り葉掘りホンネ掘りインタビュー」。三宅は池袋で2回、昭恵さんと酒を飲んだ。そのことを指摘されて三宅は「一番遠いところにいる人間と話をしなければ、政治の調整力なんて機能しようがないじゃないですか」と言い返す。なるほどうまい言い方だ。しかしおれには「政治の調整力」という言葉が引っかかる。あんたは権力とたたかっていたんじゃなかったのか。

 何故安倍夫人を高江につれて行ったのか。池袋で飲んだ席で映画「標的の村」の話をした。後日それを観た昭恵さんから「高江に行きたい。住民と話がしたい」と連絡があった。昭恵さんが高江に行けば座り込んでいる住民の強制排除を防ぐ「抑止力」になるかも知れない、「隠し球」のつもりだったという。

 「あなたは安倍昭恵さんに取り込まれてしまったの?」という原監督の突っ込みに「僕が昭恵さんを取り込んだ可能性もありますよ」と余裕を持って答える。しかし夫人を取り込めば安倍首相にまで影響が及ぶとは考えていない。「2人は別人格。妻ひとりを説得すれば問題が解決するなどという単純なものではない」。

 原監督は三宅のこのあっけらかんとしたドライ気質を、少年期をベルギーで送ったことで身についた「グローバルな視点」と評価する。そんな三宅を「誇大妄想狂」だとか「リアリティに欠ける」とか言って「ヘイト」する人たちの存在を懸念する。「私は彼を信じる。そして彼を国会に送り込んでみたい」と言う。おれに言わせればそういう原監督自身が三宅洋平に取り込まれたのではないか。おれは三宅洋平なる人物を信用しない。