戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)トランプ当選へのサンダース議員の提言 16/11/29

明日へのうた]より転載

 米大統領選結果について、予備選挙でヒラリー・クリントンと争い善戦したバーニー・サンダース上院議員が厳しく論評している(11月11日付『ニューヨークタイムス』ウェブ版。12月1日発行『労働情報』誌掲載)。アメリカの民主勢力はトランプとどう向き合おうとしているのか、興味深い。

 サンダース議員は選挙結果について「私はこの結果を悲しいことだと思うが、驚きはしない。何百万人もの人々が既存の経済・政治・メディアにうんざりし、我慢できなくなって投票したということは驚くことではない」と受け止める。「トランプが『アメリカ人は変化を望んでいる』と言うのは正しい」。

 ではトランプは国民が望んでいる「変化」を実現できるのだろうか。サンダース議員はいくつかの疑問を呈する。「彼は多くの労働者家族が感じている経済的苦痛を作り出してきた強大な勢力に立ち向かう勇気があるだろうか」「彼はウォール街に立ち向かい、『巨大すぎて潰せない』金融機関を解体し、大銀行に小企業への投資や農村、インナーシティでの雇用創出を要求する勇気があるだろうか」「彼は本当に、選挙中に公約していたように医薬品産業に闘いを挑み、薬価を引き下げるだろうか」。

 サンダース議員は結局はトランプが「別のウォール街の銀行家を財務長官に据え、これまで通りのやり方を継続する」のではないかと警告する。それを見極めるのはこれからだ。「彼が本気で労働者家族の生活を改善するような政策を追求するつもりなら、私は彼が私の支持を獲得するチャンスを提供するだろう」。

 一方サンダース議員は民主党も今までやってきたことの反省の上に立って一連の改革をしなければならないと提言する。「私は民主党が企業エスタブリッシュメント(既成勢力)の束縛を断ち切り、再び働く人々や高齢者、貧困層の草の根の政党になるべきだと強く確信している」「われわれはウォール街、製薬会社、保険企業、化石燃料企業の強欲と権力に立ち向かう勇気を持たなければならない」。

 サンダース議員の提言は、日本の政治、経済状況にもぴたり当てはまるのではないだろうか。日本の野党、中でも最大勢力の民進党がサンダースが提示するような方向に舵を切ることができれば、ずいぶんと政治状況も変わると思う。確かにトランプは歴史を逆行させる危険をはらんでいるが、これを機に民主勢力が大きく飛躍する可能性もあるということだ。

 「われわれは退行するのでなく、前進しなければならない」(サンダース議員の結びの言葉)。