戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)海外旅行・ポーランド、ハンガリー(2003年)② 16/12/11
19日はいよいよアウシュビッツに行く日。朝早くにバスでホテルを出発、アウシュビッツへ直行かと思っていたが、まず世界遺産のヴィエリチカ岩塩採掘場跡へ行くという。1時間ほどで着いたが、思った以上に大がかりな採掘場だ。380段の危なかしい階段を手摺りを頼りに降りて地底へ。広場や教会もある。ま言ってみれば地下宮殿みたいなもの。そんなところに2時間も閉じ込められて文字通り閉口した。
上りのエレベーターも怖かったな。何時ロープが切れて墜落するかヒヤヒヤ。坑道から外へ出て太陽を拝んだ時の安心感。そこで昼飯。相変わらずワインはまずかったが、大きい丸いパンをくりぬいてそこへキャベツやハムの炒め物を詰め込んだ料理が美味かった。空がにわかに曇ってきた。
早々にバスに乗り込んで、アウシュビッツ強制収容所跡のあるオシフェンチムへ。収容所の入り口のアーチに「働けば自由になる」の看板がかかっている。殺すためでなく、働かせるためにユダヤ人を集めたというわけだ。ガイドは保存会専従の日本の青年。約2時間にわたる見学は肉体的にも精神的にも疲れた。途中で沛然とした雨。雨宿りした煉瓦の部屋は心なしか血の匂いがした。
アルバムに貼り付けたメモ。《世界遺産のアウシュビッツ強制収容所跡。人間が人間に対していかに残酷になれるか。背筋が寒くなる。しかし、よく考えてみると、アウシュビッツ的現象は、21世紀の今でもまだまだ残っているのだ。ますます心が凍える。死者の遺したメガネの山、靴の山、カバンの山、それらは60年もの間何を語ろうとしていたのか。人間はまだその言葉を解読していない》。
ポーランド最後のディナーはクラクフの小さなレストラン。そこでおれは小演説をやった。
「ショパンの演奏会はよかったね。最初退屈だったが、半分過ぎくらいからおれのような芸術音痴のガサツな男でもジーンときた。これがポーランドの文化の深さなんだよね。ワルシャワは駅前の大工事に象徴されているように今大きく変わろうとしている。街が変われば人間も変わる」
「どのように変わっていくのか。私もこれから何年生きられか分からないけどもう一度来て変わったワルシャワを見てみたいものだ。足かけ4日間でしたが、一度はポーランドに来たいという長年の願いが叶い、今とても充実した気持ちです。今夜は心ゆくまで飲みましょう」。