戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)時の権力と癒着した組合の末路 17/01/09
連合の自民党への傾斜が顕著である。昨年暮れには安倍首相、神津会長会談も。2人は自民党の目玉商品「働き方改革」で意気投合した。連合は賃上げばかりでなく、雇用確保、労働時間規制、非正規対策などを政権与党に丸投げする方針のようだ。これでは労働組合無用論が出てくるのも仕方あるまい。
そんなことを考えながら、たまたまある組合史をめくっていた。1988年に出版労連が高文研から出した「出版労働者が歩いてきた道」(出版労連30年史)である。最近亡くなった森下昭平さんが3人の執筆者の1人だ。あとがきによると、戦前編の記述は森下さんの書き下ろしだという。
中国侵略戦争が泥沼化する中で日本労働組合全国協議会(全協)など左派の労働組合はどんどん潰され、1936年、反共労使協調の日本労働組合総同盟(全総)に統一される。全総は「進んで全産業に亘り同盟罷業の絶滅を期す」と有名なスト絶滅宣言を発し、戦時体制への協力を打ちだす。「しかし『戦局』は、たとえ右派であれ労資協調であれ、『自主的』な労働者の組織を許すほど甘くはなかった」。
「1936年には労働組合員数は973組合42万人と戦前のピークを示すが、この組織労働者のかなりの部分を占めたのは大企業の『会社組合』だった。そしてこの頃から、単なる労資協調をこえた、戦争協力・推進の日本主義的愛国労働運動が主流となる。そしてついに1940(昭和15)年には右派組合も含めて主要組合のすべてが解散して『大日本産業報国会』(産報)が生まれる。産報は、中央本部―道府県産報ー支部産報(警察署ごと)―事業所ごとの単位産報(社長・工場長が会長)というビラミット型組織で、争議未然防止から生産増強運動に重点を移す。そしてこの年、労働組合組織率は0.12%」。
なんだか背筋が寒くなるような記述である。たとえ右翼的労資協調の労働組合でも、国家権力や資本が邪魔だと判断すれば簡単に潰されるのである。いや労資協調でたたかう力がない組合ほど簡単に抹消される。例えばユニオンショップ協定を破棄されれば現存の大企業労組のほとんどは間違いなく壊滅する。
労働組合が時の政治権力や資本と癒着すればどうなるか。戦前の歴史が厳しく教えているのだ。連合の中と外からそのことを指摘しなければならない。警鐘乱打しなければならない。手遅れにならないうちに。