戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)労働尊重特別市を宣言したソウル市長17/03/14
小池百合子東京都知事が6月の都議選を制し、さらに国政にまで手を伸ばすのではないかともっぱらの噂だ。隣の韓国では首都ソウルの市長を務めた李明博(イ・ミンピョンパク)氏が、その後大統領になった例がある。彼はソウル市長時代、市政に民間の経営手法を取り入れたとして評価されている。
李明博氏の後は呉世勲(オ・セフン)市長。彼は2期目の当選を果たしたが、学校給食制度に関する国民投票が低率だったことの責任をとって2ヵ月で辞任した。そこで補欠選挙が行われることになり、当選したのが現朴元淳(パク・ウォンスン)市長。前の2人は保守系だったが朴氏は革新の野党統一候補だった。現在は「共に民主党」に属し、14年7月1日の市長選で再選を果たしている。
3月15日付の『労働情報』誌にその朴元淳市長の近況が取り上げられている。「ソウル市 正規・直営化を推進」「完全週40時間実現 感情労働条例も」。レポートしたのはNPO法人官製ワーキングプア研究会理事長の白石孝氏。小池都知事とは一味違う都市行政を行っているというのだ。
「感情労働条例」とは聞きなれない言葉だが「接客や住民対応で過度のストレスに置かれることが多い『感情』労働を保護する条例」という趣旨だ。「労働尊重特別市」(涙がでるほどいい言葉だなあ)をスローガンに掲げる朴市長の下で、きめの細かい労働者保護の立場が貫かれていると言える。
朴市長は就任時「公共部門非正規職の正規職化」を公約、地下鉄、病院、清掃などの公務現業労働者の不安定雇用、低賃金の改善を進めた。「その代表例がタサン(茶山)コールセンターで、広範囲な公的業務に関する問い合わせや苦情対応をいくつかの業者が受諾しているが、直営に戻すことにした」。
いまソウル市では週40時間を上限とする労働制度を2020年までに完全実施することが課題になっている。朴市長は韓国の2大労組である民主労総・韓国労総と半年かけて協議。この4月からソウル医療院(市立病院)と信用保証財団の2職場で試行に入る。一つの市でこれだけのことができる。韓国の地方分権て進んでいるんだな。ま小池知事ではとうていできないだろうけどね。
繁忙期月の残業上限を100時間「未満」とするか「以下」とするか「基準」とするか。そんなレベルの低い話で揉めているどこかの国の政治家や労組代表(連合)に、朴ソウル市長の爪の垢でも飲ませてやりたい。