戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)

過去も米の戦争は空爆から始まった 17/04/11

明日へのうたより転載

 アメリカのトランプ政権がシリアへの空爆に踏み切った。「米『化学兵器を阻止』」「シリア軍にミサイル攻撃」「露が避難『侵略行為』」「市民ら15人死亡 現地報道」(8日付『毎日』)。地中海に常駐している駆逐艦2隻からシリア空軍基地に向けて巡航ミサイル・トマホーク59発を発射したという。

 トランプ大統領は今回の攻撃は限定的なものだと言っているようだが、一度空爆を始めたらそれだけでは終わらないのが歴史の教訓だ。あのアメリカを戦争の泥沼に引きずり込んだベトナム北部のトンキン湾空爆。9・11テロの報復を理由としたアフガニスタン空爆。大量破壊兵器があるとのガセネタで始めたイラク空爆。結局地上軍を投入して本格戦争を始めたではないか。戦争に限定なんかあり得ないのだ。

 さらに恐ろしいのは、今回のシリア空爆が北朝鮮への威嚇だという点だ。北朝鮮が弾道ミサイルを開発していることに対抗して米艦船を朝鮮半島に集め、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と広言。シリアの次はお前だぞというわけだ。この挑発行為によって危険に晒されるのは韓国と日本なのだ。

 トランプ大統領は4日のシリア攻撃について、アサド政権の化学兵器による攻撃で犠牲になった子どもの写真を示し「非人道的行為であり、これを防止するための攻撃は米国の利益になる」と言った。彼はアフガニスタンやイラク、ベトナムへの攻撃で死んだ子どもたちは死んで当然と言うのだろうか。

 おれたち日本国民として看過できないのは、こんなトランプの蛮行を日本の最高責任者・安倍晋三首相が「支持」し「理解」すると表明していることだ。北朝鮮への軍事的圧力行為についても9日、トランプ側から申し入れられた電話協議に応じ「緊密に連携して対応する」と即座に約束した。

 安倍首相は電話協議の後の記者会見で「シリア、北朝鮮について率直な意見交換を行うことができた。大統領が同盟国、世界の平和と安全のために強いコミットメンと(関与)をしていることを高く評価した」と述べた。トランプがやったこと、やろうとしていることにもろ手を挙げて賛成したということだ。

 これからシリアでの軍事行動はエスカレートするに違いない。北朝鮮でも何が起こるか分からない。トランプ大統領に隷属を表明した日本。北朝鮮が自国を守るためと称して、日本を攻撃する口実を与えたことだけは確かだ。こんな首相には即刻退陣してもらわなければならない。日本と日本国民の安全のために。