戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
5月に仏大統領になったばかりのマクロン氏が、続いて行われた国民議会(下院)議員選挙でも大勝した。「マクロン派6割」「仏総選挙『国民、希望選んだ』」「仏総選挙 社会党事実上の崩壊」(20日付『毎日』)。「マクロン新党過半数」「仏下院選 投票率は過去最低」(20日付『赤旗』)。
マクロン氏はこの選挙を前に自分の与党「共和国前進」を立ち上げ、下院577議席中308議席を獲得、連携政党「民主運動」の42議席を合わせると安定過半数を獲得したことになる。マクロン氏と大統領を争ったペロン女史率いる国民戦線は8議席、社会党(中道左派)は45議席に後退した。
選挙向けに自分の息のかかった政党を立ち上げるという手法は、都議会議員選挙の小池「都民ファースト」と同じ趣向だ。世界中でこんなやり方が流行るのだろうか。マクロン氏にはEU堅持という一応まともな看板があるが、小池知事には何もない。築地市場の豊洲移転問題でも結局自民党とおんなじだ。
ま、小池ファーストの方はこのくらいにしてマクロン氏に戻るが、おれはやっぱりこの男の人気もひと時のブーム的現象だと思う。フランスには歴史の重みがあるはず。それは地下水のように目には見えないけれど脈々と流れているに違いない。第一、労働者と労働組合が黙っているはずがない。
『赤旗』によれば今回の選挙で、左派政党の「服従しないフランス(FI)」が17議席、フランス共産党が10議席を確保、両党で左派連合の共同会派を形成するとの見通しだという。また今回選挙の投票率が43%と過去最低を記録したことも特筆される。FIを率いるメランション氏は「一種の市民的ゼネストを実施した」と指摘し、「たたかうことなく社会的権利を譲り渡すことはない」と強調する。
日本共産党は数年前までの国政選挙で日本の現状を「ルールなき資本主義」と断じ、「ルールある経済社会」を目指す方針を掲げた。「ルールある経済社会とはどんな社会か」との質問に「例えばEUのような国だ」と答えた。その時点では正解だったが、その後はギリシャなどの「金融危機」やIMFと結託した「緊縮財政」の押し付けなど、とてもルールある経済社会のお手本とは言えなくなった。
マクロン大統領のフランスは国民との関係で、これから大きな試練に見舞われるだろう。そこでリーダーシップを握るのは労働組合(欧州労連・ETUCやフランス労働労働総同盟・CGT)だとおれは見ている。日本のメディアもその辺に目を付けた取材・報道を心がけるべきではないか。