戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
注目の東京都議会議員選挙が終わった。大方の予想通り小池知事が率いる都民ファーストが地滑り的大勝利を果たした。自民党は惨敗。公明党は1議席、共産党は2議席伸ばした。民進党は壊滅寸前だ。
今回の選挙では圧倒的人気の小池知事との間合いをどうとるかで各党とも苦慮した。自民党は対決姿勢。公明党は小池与党を選び選挙協力。民進党はどっちつかずで都民ファーストに食い荒らされた。共産党も小池知事との正面対決を避け「共産党対自公の争い」を旗印にした。その結果どうだったか。
出口調査の結果では「小池知事の政策に賛成」が70%を超える。しかし小池知事の政策って一体何だ。中央卸売市場の豊洲移転に待ったをかけたのが唯一政策らしきもので、少子高齢化や基地問題など東京都が抱えている課題については何ひとつ打ち出していない。ただ「新しい都政を」と言うだけだ。
おれは「都民ファースト」ではなくて「小池ファースト」だと思う。これ以上都民がヨイショするとずのぼせてあの橋下徹になってしまう。それは決して都民のためにならない。そこのところを明確に批判すべきだった。もっとも明確に批判しなかったからなんとか2議席増に漕ぎ着けたという見方もある。
さて首都東京を制覇した(かに見える)小池知事と都民ファーストだが、今度は国政にまでウイングを広げるのではないかという見方がある。「都民フ『国政』現実味」(3日付『毎日』)。「圧勝によって、今年4月に国政研究会をスタートさせた都民ファーストの国政進出も、現実味を帯びる」。
今回の選挙で安倍政権が苦境に陥ったのは事実だ。もり・かけ疑惑に端を発し、お友だち連中が寄ってたかって安倍首相の足を引っ張る。憲法九条改悪に執念を燃やしてはいるが、もはや政権末期の土壇場だとの指摘もある。そうすると安倍に代わる保守政治の担い手が必要になる。
小池知事と都民ファーストが安倍政権崩壊後の受け皿になるのかどうか。もちろんまだ未知数だが、権力中枢の黒幕たちは彼女を有力な選択肢として育てていることは間違いない。ひと頃は大阪の橋下や名古屋の河村に期待したがこのところ化けの皮が剥がれて落ち目の三度笠だ。ここらで一つ小池百合子で行こうじゃないかと手ぐすね引いてる気がする。早めに引きずりおろして悪政の芽を摘むことが大切だ。