戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)
連合が「残業代ゼロ」容認に方針転換したことに多くの新聞が疑問の声を発している。「連合の姿勢 原点を忘れてないか」(『信濃毎日』)「残業代ゼロ法案/不可解な連合の方針転換」(『神戸』)「成果型労働、連合が容認 生活と健康守れるのか」(『毎日』)「連合の存在意義揺らぐ」(『沖縄タイムス』)。
『朝日』は「『残業代ゼロ』連合容認に波紋『次期会長候補が独走』」と、逢坂事務局長ら幹部が傘下組合や組合員の声を無視して政権側と取引した経緯を明らかにしている。その上で「労基法の改正 疑念と懸念がつきない」と政権にすり寄った「連合の選択」に疑問を突き付けている。
新聞労連委員長を務めた毎日新聞の東海林智記者は、自己のツィッターで次のように連合幹部の非をなじる。「労働者の命をあなたがたの権力争いの道具にするなよ。誰が連合会長になろうが、労働者の命を手土産に安倍と握手した手で団結の拳が握れるのかい?」。さすが痛烈だ。
そして残業代ゼロ法案が初めて国会に上程された第一次安倍内閣当時、厚労省記者クラブのロッカーに「残業代ゼロ制度反対」のステッカーを貼った秘話を明かす。初め毎日と共同だったが、そのうちテレビも含め、サンケイを除く全社がワッペンを貼った。当局は庁舎規定による取り剥がしができなかった。
当時の連合高木会長は過労死家族会の訴えに涙を流して同調、「必ず阻止します」と誓ったという。いまの幹部はどうか。熊沢誠甲南大学名誉教授は「毒食わば皿まで」の姿勢だと決めつける。
「すべてのばかばかしさは、沈みゆく安倍政権のもとでも、労働運動はあらゆる悪政になにも抗えないという団子虫のように臆病なあきらめからきている。神津会長よ、逢見事務局長よ、村上総合労働局長よ、えせリアリストを気取ってぐだぐだ言うまえに厚労省や首相官邸前でハンストでもやってみよ」
『日経』報道によれば、この「連合の変節」に日本経団連は大いに励まされ、「残業代ゼロ」を含めた労基法改正を秋の臨時国会で一気に通すよう政府に働きかれる方針だという。冗談ではない。労働者の生活といのちをそう易々と差し出してなるものか。戦争法や共謀罪では労働組合の参加がもう一つだったが、今度は自らに直接降りかかってくる問題だ。ストライキも含む大闘争で見事粉砕しようではないか。