kyuukyuu

桂敬一/メディアウオッチ(18)/憲法施行60年 「護憲」の論が6割超 各紙社説―鋭い危機意識反映 地方紙 「改憲」に傾く全国07/05/1

kuruma


 

 憲法施行60年 「護憲」の論が6割超 各紙社説

  ―鋭い危機意識反映 地方紙 「改憲」に傾く全国紙―

 

日本ジャーナリスト会議会員 桂  敬 一

 

 

 憲法施行60年を迎え、なおかつ改憲手続きのための国民投票法案が今通常国会で成立必至という情勢の下で、今年の憲法記念日に臨んだ新聞各紙は、さすがに例年とは異なる緊張感を漂わせ、憲法社説を掲載した。

 その動向を、日本新聞協会加盟の主要新聞47紙・4348万部について調査、論調の内容を比較、分析してみたが、その全体的な特徴は、あらまし次のようにまとめられる。

 

(1) 9条を中心にみた場合、危機感を強く反映、前回=05年の調査結果(対象45紙・4382万部)と比べて、「護憲」(護憲の立場を標榜する新聞と論憲的立場をとるが護憲色が強い新聞の合算)の社論を示した新聞が40紙、2693万部(全体の61.9%)を占め、「改憲」(改憲を標榜する新聞と論憲だが改憲色の強い新聞の合算)の社論をみせた新聞(4紙、1531万部=全体の35.2%)を、一応大きく上回る結果となった(方向性不明が3紙・124万部、2.9%)。05年の場合は、「護憲」が33紙、2577万部(全体の58.8%)、「改憲」が9紙、1734万部(39.6%)だった(方向性不明が3紙・71万部、1.6%)。

 

(2) 紙数・部数の変化を05年の場合と比べてみると、05年は、「改憲的論憲」の地方紙(4紙)と「方向性不明」の地方紙(3紙)が、合計7紙あったが、そのうち5紙が今回、「護憲」または「護憲的論憲」に移っていることが、注目される。また、05年の「改憲的論憲」の地方紙1紙と「改憲」の地方紙1紙が今回、「方向性不明」に移動しており、その結果、分類として「改憲的論憲」の新聞がゼロになった点も、注目される。この点に関しては、05年とのときは、共同通信が地方紙に対して2種類の論説資料(一つが護憲的論憲のパターン、もう一つが改憲的論憲のパターン)を配信していたが、今回は共同通信が、そのようにパターンを二つにはっきり分けた論説資料の配信は、しなかったのではないかと推測される。

 

(3) 結果的に「護憲」が多数派となった点に関しては、21本の社説を一挙掲載した朝日が、外形的には現行9条維持の線を打ち出し、「護憲」に踏み止まった点の貢献性が大きい。しかし一方で、「平和安全保障基本法」制定と同法の下での自衛隊の海外活動拡大を提唱する朝日の姿勢は、民主党の集団的自衛権行使論に限りなく接近するもので、95年5月3日の社説「国際協力と憲法 『非軍事』こそ共生の道」の基調を大きく後退させるものではないか、と危ぶまれる。また、「護憲的論憲」の毎日も、9条護憲の積極的意味を説く力強さが乏しく、いつまで護憲の陣営に踏み止まることができるのか、心配だ。

 

(4) これらに比べると、スケールの大きい連載社説を掲げ、護憲の今日的意義を簡明かつ説得的に述べる中日新聞(東京新聞、北陸中日新聞)、北海道新聞、西日本新聞、信濃毎日新聞、中国新聞(広島)、高知新聞、徳島新聞をはじめとする多数の地方紙の社説の健闘振りが、今回はとくに目立つ。40紙・2693万部の「護憲」新聞のうち、朝日・毎日(合計1201万部)を除く38紙・1492万部(全体の34.3%)が地方紙なのだ。また、北海道新聞、信濃毎日新聞、南日本新聞(鹿児島)、沖縄タイムス、琉球新報などは、独自に読者を対象とした憲法世論調査を実施、その結果を紙面化しているが、そこには地元紙と読者住民の強い結びつきが認められ、憲法擁護の姿勢が読者に支えられたものであることが、明らかになっている。

kuruma

以上の詳細な結果は、別表に示すとおりである。

このページのあたまにもどる